駅が遠く車の利用ない高齢者 うつリスク1.6倍
千葉大研究チーム、公共交通機関の重要性示す
千葉大学予防医学研究センターの松本一希特任研究員と花里真道准教授らの研究チームは24日、公共交通機関へのアクセスとうつとの関連の調査結果を発表した。車を利用していない高齢者で「徒歩圏内に駅やバス停がある」と答えた人と比較して「ない」と答えた人は、3年後に1.6倍うつになりやすいことが示された。 【斯波祐介】
日本老年科学的評価研究(JAGES)のデータを用いて、25市町に住む高齢者4,947人を2016年から3年間追跡した。16年時点でうつ症状のない、またはうつ病の治療をしていない日常生活動作作が自立している高齢者が対象で、内訳は男性2,512人、女性2,435人、年齢65-93歳、平均年齢73歳だった。
うつの診断は、老年期うつ評価尺度(GDS-15)を用いて、5点以上を「うつあり」、5点未満を「うつなし」と分類し、3年後のうつ発症の有無を評価した。また、駅やバス停へのアクセスは、自宅から徒歩圏内(10-15分以内)にあるかどうかを質問紙で評価。さらに地理情報システム(GIS)も使い、実際の距離も測定した。
4,947人のうち、研究開始から3年後の19年に「うつあり」となったのは全体の9.8%の483人。車利用がない932人では、「徒歩圏内に駅やバス停がある」と答えた621人に比べ、「ない」と答えた194人は、3年後に1.6倍うつになりやすかった。車を利用している4,015人には、駅やバス停へのアクセスとうつとの関連は見られなかった。
千葉大研究チームでは、高齢者のうつ対策では、公共交通機関への近接性など環境要因を考慮する必要があると説明。研究成果は鉄道やバス路線の廃止や再編を議論・決定する際に考慮すべき重要な科学的根拠だとした。
そしてオンデマンドバスや、公道を時速20キロ未満で走る電動車「グリーンスローモビリティー」、一人一人の移動ニーズに対応し、複数の公共交通機関やほかの移動サービスを組み合わせ、検索や予約、決済を一括で行う「MaaS」などの新しい移動手段を自治体などが導入する必要性も指摘している。
医療介護経営CBnewsマネジメント